【基礎知識編】偉大なる凡作、シャーマン戦車をつくるよ!(1)
目次
1.なぜ戦車がつくられたのか?
2.世界最初の戦車
3.偉大なる凡作、シャーマン戦車
こんにちは!
プラモデル初心者がプロモデラーに教わりながら、
本格的なプラモデル製作に挑戦する企画!
挑戦者の石井七歩が、タミヤプラモデルファクトリートレッサ横浜店からお送りいたします!
今回もプロモデラーの
長谷川マスターこと、長谷川伸二さんにご指導いただきます!
長谷川伸二マスターは、
タミヤプラモデルファクトリー トレッサ横浜店内にあるアトリエゾーンにて、
さまざまな講座を開催されています。→各種講座
プラモデル製作に行き詰っているそこのアナタは、
タミヤプラモデルファクトリートレッサ横浜店のアトリエゾーンで、
どんどん長谷川マスターに相談しましょう!
さて
今回製作するのは…….、
じゃじゃーん!!!
戦車!!!
1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.250
アメリカ M4A3 シャーマン 75mm砲搭載・後期型(前線突破)
Item No:35250 3,564円(本体価格3,300円)
M4A3、
SHARMAN……。
何のことやらですが、
どうやらこのM4A3というアルファベットと数字が正式名称、
通称「シャーマン」という戦車のようです。
箱を開けてみます。
ごちゃごちゃしてるぞ!!!
ゼロ戦製作編の時より、パーツが多そう。
よくよく見ると、兵士っぽいパーツもあるぞ…。
そして恐らくキャタピラー部分になるのであろう、車輪めいた部品が多い。
長谷川マスターが、
戦車系のプラモデルをいっぱい見せてくださって、
戦車について全く知らない私に対して
戦車の面白エピソードを解説してくださりました。
眺めていると、
アトリエゾーンで製作に来ていらっしゃるお客様と長谷川マスター、
そしてお客様同士、
ミリタリー談義というか、プラモ談義というか、
かなりマニアックな内容の談笑をしてらっしゃるんですよね。
マニアックな趣味の話ができる場としても、みなさんに愛されてるのでしょうね!
私は話についていくのがやっとでした!
こちらはフランスの戦車!
1/35 ミニタリーミニチュアシリーズ No.282
フランス戦車 B1 bis
青いハート可愛い…!
当時フランスでは、
トランプのマークを戦車中隊の小隊識別マークに使っていたそうです。
第1小隊 スペード、第2小隊 ハート、第3小隊 ダイヤ、第4小隊 クラブ
さすがフランス、おしゃれですね…。
こちらはアメリカの現代戦車エイブラムス!
対戦車戦では世界最強レベルを誇っているそうです。
1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.326
アメリカ M1A2 SEP エイブラムス戦車 TUSK II
ごついなあ…。
側面についている瓦のようなものは、対戦車弾をうけとめるための装備。
側面の部分に弾薬庫があるので、戦車はそこから引火して炎上しやすいそうです。
なるほど…。
こちらはイスラエルの、スーパーシャーマン!
1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.322
イスラエル軍戦車 M1スーパーシャーマン
イスラエルは1948年の建国後、
西側諸国から余剰となった「M4シャーマン戦車」を購入して、
独自に改造を重ねていったそうです。
奥に写っている「M4A3シャーマン戦車」に比べると、
砲が大きくて、その重みをささえるように砲台のうしろが出っ張っているのがわかります。
長谷川マスターは話がうまい。
そして引き出しが豊富…..。
やはり戦車や戦闘機、製作する対象への理解度が高いからこそ、
クオリティの高いプラモデル作品を完成させることができるのでしょうね…。
ところで、
皆さんの戦車に対するイメージって、どんな感じでしょう?
ゴゴゴゴゴゴゴゴ………
唸るような地響きを引き連れ、
燃え盛る戦火を街に齎す。
ゆらめく炎の中、巨大な殺戮マシーンが影を落とす。
今まで戦車に対する関心が無かった私にとって、
戦車というのはこんな漠然としたイメージで、
戦車に興味がない限り、おそらくほとんどの人が同じように漠然としたイメージを描いていると思います。
それでは!
まずは最低限、理解を助ける知識をいれてから、
製作にとりかかろうじゃないですか!
ゼロ戦制作編の時と同じく、
まずは私とおなじ初心者のための、
「最低限の戦車の知識」をまとめてみますね!
1.なぜ戦車がつくられたのか?
なぜ、戦車がつくられたのか?
その答えがあるのは第一次世界大戦。
ドイツ軍とイギリス・フランスをはじめとする連合軍がにらみ合う、
西部戦線での戦法にあります。
まずは、
おおまかな流れを見るとわかりやすいのでまとめました。
戦車開発の流れ
舞台は第一次世界大戦の西部戦線。
ベルギー南部からフランス北東部。ドイツ軍によるフランス侵攻。
↓
歩兵達は性能のいいライフル銃を装備しているため、
そこに生身で突撃するのはかなり無謀。多大な損害が生じる。
↓
ドイツ軍は持久をはかるために穴を掘って塹壕を構築し始めた。
有刺鉄線などで防御、砲弾や機関銃で猛攻撃。(塹壕戦)
↓
連合軍側も塹壕を掘り応戦。
↓
穴を出れば撃たれるのでどっちも動けない。
↓
戦争は持久戦の消耗戦へ。変化の無い膠着状態に。
↓
ライフルや機関銃が効かなくて、
有刺鉄線を壊して塹壕を超えることができるマシンがあったらなあ……。
↓
戦車の登場
さて。
それでは細かくざっくりみていきましょう!
第一次世界大戦(1914年〜1918年)における戦場の主役は、
攻撃においても防御においても「歩兵」でした。
19世紀後半、火器のめざましい発達により、
歩兵は標準装備として射程距離の長いライフル銃を持つようになりました。
フランス軍部隊による銃剣突撃の写真。
(出典 : Wikipedia 西部戦線より引用)
攻撃側はまず大量の砲弾で砲撃をし、その後は大量の歩兵による突撃。
防御側は弾を避けるために、
「塹壕(ざんごう)」とよばれる身長程度の深さの穴を掘り、
塹壕に設置した機関銃、有刺鉄線などによって応戦しました。
この塹壕は最終的に、なんと300キロに及ぶことになります。
(出典 : Wikipedia 西部戦線より引用)
スイス国境からイギリス海峡まで延びた塹壕線に沿って数百万の若者が動員され、
防御側の優勢が確立し、攻撃側には大量の犠牲者が続出。
ライフル銃や機関銃による弾幕射撃の前に、歩兵による突撃は非常に無力です。
それまでに行われた国家間の戦争に比べ、
第一次世界大戦では死傷者の数が飛躍的に増加しました。
この結果として、
前線の位置はほどんど変化することなく、西部戦線は膠着状態がつづきます。
そしてこの閉塞状況を打破するため、
歩兵と機関銃を敵の塹壕の向こう側に送り込むための装甲車両が求められました。
こうして開発されたのが戦車というわけですね。
2.世界最初の戦車
塹壕戦での膠着状態を突破するため、イギリスは戦車を計画。
各国に秘匿で開発を行うため、
開発名を「T.S.(Tank Supply=水槽供給)委員会」と呼ぶことにし、
これにより戦車は「タンク」と呼ばれるようになりました。
さまざまな紆余曲折を経て、
はじめて実戦に登場したのが1916年、イギリス軍の戦車「マーク I 戦車」。
この戦車が初めて登場したソンムの戦いでは、
計60輌のマークIが投入を予定していましたが、
輸送時のトラブルや移動中の故障から脱落する車輌が相次ぎ、
用意されたのは49両、稼働できたのは18両だけでした。
また、前進を開始するとエンジントラブルや砲弾孔に落ちて破損するなどの問題が発生し、従来の作戦通り歩兵を先導して敵陣地に突撃できたのはたった5輌だけだったそうです。
しかし、
前線のドイツ軍兵士は、
鉄条網を超えてずんずんと進んでくる謎の新兵器にパニックに陥ったらしい。
そりゃそうだ!
だって、こんな変な形をしてるんだもの!
(出典 : Wikipedia マークⅠ戦車より引用)
うーん、ミカヅキモに似てる!
こんな変なマシーンがこっちに向かって進んできたら
どうしたらいいのかわからないよ!
Mark.Ⅰ基本情報
全長 ▶︎ 9.9 m
全幅 ▶︎ 雄型:4.19m 雌型:4.36m
重量 ▶︎ 雄型:28t 雌型:27t
乗員数 ▶︎ 8名
4名は砲手や機関銃手で、残り4名は操縦関係。
装甲 ▶︎ 6-12mm
小火器の攻撃に耐えられるようにしたはずが、
ドイツの小銃/機関銃用徹甲弾「SmK弾」には貫通されてしまった。
また、歩兵に包囲されて制圧されたり、手榴弾で攻撃されたりする危険性もあった。
主武装 ▶︎
オチキス 6ポンド(57mm)砲×2
(雄型。他に、副武装としてオチキス .303(7.7mm)軽機関銃×3)
ヴィッカース .303(7.7mm)水冷式重機関銃×4
(雌型。他に、副武装としてオチキス .303(7.7mm)軽機関銃×1)
左右の車外側面に57mm砲を二門搭載した対陣地戦車「雄型」
機関銃を搭載した対歩兵戦車「雌型」
雄型が塹壕を突破し、その雄型を攻撃しようとする敵歩兵を雌型の機関銃で撃退する戦略が想定されていた。
機動力 ▶︎ 速度 5.95km/h
エンジン ▶︎
デイムラー ナイト スリーブバルブ 16,000cc
水冷直列6気筒ガソリンエンジン 105 hp
行動距離 ▶︎ 23.6マイル(およそ38キロメートル)
(出典 : Wikipedia マークⅠ戦車より引用)
最初の実戦的戦車であるマークⅠは、
構造上サスペンション(路面の凹凸を車体に伝えない緩衝装置)が無く、
がったがったに揺れて最悪の乗り心地だったそうです。
また車体の内部は分割されておらず、
乗員はエンジンと同じスペースに乗り込んでいた上に、換気を考慮されていない構造であったため、有毒な一酸化炭素や気化した燃料、オイルの臭気や硝煙などによって、車内は劣悪な環境でした。
その上、エンジンから発生する熱によって、
内部は摂氏50度に達することもあったそうです。
それでも膠着化した塹壕戦において、戦車の存在は衝撃を与えたでしょうね。
ドイツ軍側からの気分を想像すると……うーん……。
宇宙船に遭遇するような感じだったのではないかなあ。
人間って
何かを理解しようとするとき、
既知のものと比較参照することでしか、理解できないと思う。
たとえば
ものすごい賢明な科学者が、
超弦理論の知識はすっごく持っているのに、初歩的な科学の知識は全く持っていない、ってことはゼッタイにありえない。
人間の理解には順番があって、
その順番を飛び越えたものに遭遇したときには、思考停止したりぶん投げたりする。
みんな、私も含めてほとんどの人は、
ラテン語で書かれた超難解な数学の論文なんて、
さいしょっから読もうとしないでしょ?
だからこそ何かを理解するために、
例えばレベル100の知識を理解するためには、
レベル10の知識…50…80…90…99の知識…と、
比較参照するための基となる知識を順番に蓄えないと、
絶対に理解することなんてできない。
このマークⅠ~IVのように
それまで塹壕の中で銃や砲を打ち合う世界だったところに、
理解のレベルを何段かとびこえてしまった物体Xが、
突然ヘンな形のミカヅキモが、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ………って侵撃してきたら……。
おそらく、普通の人はぴたっと思考停止して、
逃げろ!逃げろ!逃げろ!
それ意外に考えられることなんて無いと思う。
ということで
このミカヅキモ戦車が、
膠着状態の戦場に多大な衝撃を与えたことは、想像に容易い。
さて、このマークⅠの衝撃が戦訓となり、
ドイツ、フランス各国も戦車の開発をスタートさせることになります。
戦車の進化史についても書こうと思ったのですが、
調べていくと、われわれシロウトにはちょっと専門的すぎるので…、
割愛させていただきます!
ということで次は、
今回制作するM4中戦車、通称シャーマン戦車について書いていきますよ!
3.偉大なる凡作、シャーマン戦車
シャーマン戦車誕生までの流れ
1939年、第二次世界大戦が勃発。
アメリカ陸軍は戦車の保有数が少なく「M2中戦車」が唯一の中戦車でした。
しかし当時ヨーロッパを席巻していたドイツ軍の戦車とくらべると、
その性能の劣勢は明らかです……。
ドイツ軍のIII号戦車・IV号戦車 ▶︎ 50mm砲または75mm榴弾砲
アメリカ軍のM2中戦車 ▶︎ 37mm砲と機関銃8挺
こう見ると、M2中戦車は装備が頼りない…。
アメリカは戦力に不安を感じていたんですね。
ということで、
アメリカの参戦に備えて、
全周旋回砲塔(砲を撃つ部分が360°回転する構造)
そして大型の砲を搭載した戦車が必要だ!ということになります。
しかし、
当時のアメリカでは大きな砲を生産する技術が足りず、
とりあえずは中継ぎとして75mm砲を車体に搭載する「M3中戦車」が生産され、
航空・自動車産業を中心に、生産体制の整備が急ピッチで行われました。
1941年10月、
ようやくM4中戦車が制式採用。
鋳造生産能力の不足から鋳造一体構造の上部車体を持つM4A1と
板金溶接車体のM4とが同時に量産される事になります。
鋳造車体のM4A1(76)W
(出典 : Wikipedia M4中戦車より引用)
さて。
まずはシャーマン戦車のスペックをざっと見ていきましょう。
私には装備やエンジンのことについてはわかりませんが、
大きさや重さなど、
想像を補填するのに役立ちます。
M4中戦車基本情報
車体長 ▶︎ 5.84 m
全幅 ▶︎ 2.62 m
全高 ▶︎ 2.67 m
重量 ▶︎ 30.3 t
速度 ▶︎38.6 km/h(整地)19.3 km/h(不整地)
行動距離 ▶︎ 193 km
装備 ▶︎
主砲 37.5口径75mm戦車砲M3(90発)
52口径76.2mm戦車砲M1(71発)
副武装 12.7mm重機関銃M2×1(600発)
7.62mm機関銃M1919×2(6,250発)
装甲 ▶︎
防盾:76 mm
砲塔:前面64–76 mm、側面50 mm、後面64 mm
車体:前面51 mm、側面38–45 mm、後面38.1 mm
エンジン ▶︎
Continental R975 C4
4ストローク星型 9気筒空冷ガソリン
400 HP
乗員 ▶︎ 5 名
(出典 : Wikipedia M4中戦車より引用)
スペックを見ると特に優秀なところのないシャーマン戦車。
凡作と言っていいほどフツウの能力である。
……しかし!
シャーマン戦車がすごいのは、
多種多様ないろいろなエンジンを搭載できたところにあります。
航空機用の星型空冷エンジン、
トラック用の水冷ディーゼルエンジン、
バス用の水冷ガソリンエンジン…。
エンジンごとにM4A1…M4A6と型式が区別されていましたが、
そのほとんどが軍事用でなく民間のエンジンだったのです。
それが意味するのは、
戦車の大量生産が可能になったということ。
シャーマン戦車は、
量か質かのどちらか一方ではなく、
信頼性と生産性を共に確立し、50000両という空前の生産数を誇った。
操作も簡単で、構造がシンプル。
故障が少なく、知識の無い兵士にも容易にメンテナンスすることができた。
数、操作性、メンテナンスの容易さ。
それがシャーマン戦車の長所なのです。
(出典 : Wikipedia M4中戦車より引用)
さて。
これだけの知識があれば、
実際にプラモデル製作に入るときも熱を持って製作することができますね!
何かを知ることで、
それまでは盲点だった部分が見えてくることがあります。
それまではすべて同じに見えていた戦車が、
砲の大きさや砲台の有無、キャタピラの形など、
個性を認識することが可能となり、そこからまた見識が広がるんですね。
長谷川マスターに教わりつつ、製作しながら、
今後も戦車に関する面白知識をしたためていきたいと思います!
4. 次回予告
次回シャーマン戦車、
さっそく製作編に突入しますよ!
タミヤプラモデルファクトリー トレッサ横浜店には、
気兼ねなくエアブラシを使える塗装室や、
使い勝手のいいアトリエゾーンが完備されています。
専門的な工具セットのレンタルもありますし、ワークデスクで誰にも邪魔されず、
ショップゾーンで好みのキットを選んですぐに制作に取りかかれます。
さらに長谷川伸二マスターが、
さまざまな講座を開催されていますので…→各種講座
「プラモデル、やりたい…」
「戦車の話で盛り上がりたい…」
「プラモデル友達が欲しい…」
そんなあなたは、
ぜひタミヤプラモデルファクトリー トレッサ横浜店に足をはこんでみてはいかがでしょうか?
それではまた次回まで、乞うご期待です!
ライター : 石井七歩
1991年 東京生まれ。現代美術家。
オフィシャルウェブサイト→ nahoishii.com
フェイスブック→ Facebook
ツイッター→ Twitter
石井七歩
最新記事 by 石井七歩 (全て見る)
- 【チタンマフラー着色編】世界最速のNinja H2Rを自分好みのデザインにする!(3) - 2017年5月13日
- 【キャンディ塗装編】世界最速のNinja H2Rを自分好みのデザインにする!(2) - 2017年4月21日
- 【色選び編】世界最速のNinja H2Rを自分好みのデザインにする!(1) - 2017年3月10日